エンジニアのお仕事で、何か企画を考えるときに、考え方のテンプレート手法を用います。
特に、チームや組織といった大人数で考えるときは、こういったテンプレ手法は超重要です。
先人たちが試行錯誤して出来上がった、アイデア発想のフレームワークというものは説得力があり、使いやすいです。覚えておいて損は無いと思います。
テンプレ手法の前に、アイデア発想の流れについて
1.アイデアのネタになる情報収集
発想する以前に、アイデアのネタになる情報が無いと形になりません。逆に収集した情報が多いほど、発想するアイデアの質・量が向上します。
2.アイデアの発想
収集した情報を元に、大小問わずアイデアを出し尽くします。しかし、出すアイデアはバイアス(個人の思想や知識によって偏り)がかかります。それを取り除きアイデアを発展させます。
3.アイデアの検証
無数に出たアイデアの中で、これはと思う候補を選び、本当に使えそうか可能性はあるのか検証します。
4.アイデアの選定
検証して残ったアイデアの中で、最も適しているアイデアを選定します。
これらがアイデア発想の流れです。それぞれの段階ごとにテンプレ手法があります。
今回のテーマである「2.アイデアの発想」のフレームワークを紹介します。
ブレーンストーミング

超定番ですね。ルールは単純で、批判や評価はしない、突拍子もないアイデアOK、質より量、出たアイデアから発展していこう、です。このやり方を守って、とにかくアイデアを出すことです。
どのような場面が、使い時?
- アイデアの形が全く無いスタートの段階
- アイデアの方向性を縛られたくない、大小・方向性様々なアイデアが欲しい
- 複数人でアイデアを考えるときの最初の意見出し
これは皆さんよく使いますよね。
良いアイデアも悪いアイデアも関係ないので批判もされず、内気な人でも自分の意見を比較的言いやすい。
また、自分の考えを伝えることで、受け入れられたような気持ちになり、気軽な雰囲気や結束感を作れます。アイスブレイクにも向いてますね。
アイデア発想以外でも、ブレーンストーミングを行い、打ち解けてからチーム作業開始。というのも有効な使い方だと考えます。
どうやって使う?
どんどん思いついたアイデアを出していきましょう。前提として、批判や評価はNG。
ただし、無駄な話をしても仕方がないので、ファシリテーターが上手いことコントロールする必要はあります。
私も言われた経験があるNGシーンとしては、「その案だったら、こっちの案の方がよくない?」、「その案は、こっちの案と同じ意味?」などの批判っぽく無いやつです。これを言われると、考えてからアイデアを出すようなります。
「ちょっと・・・」と思うアイデアだとしても、一旦スルーして、意見を促すことが吉。後からグルーピングなり除外するなりやればOKです。
テーマを具体的にしよう
自由発想とはいえ、抽象的すぎると、人によってテーマの理解が異なってきます。
そもそもの欲しいアイデアが出てこない場合や、方向性が違いすぎてアイデアをまとめれない場合があります。
「沢山アイデアが出たけど微妙だな」のパターンはここが原因の場合が多いです。
「儲かるビジネスについて」よりも、「健康志向な飲食サービスについて」のように、ある程度の制約がある方が良いアイデアになる場合があります。しかし、制約がありすぎるとアイデア量が減ってしまうので、そのさじ加減は考える必要があり、ブレーンストーミングの一番難しいところでもあります。実体験としては、「どの市場・誰」と「自分の製品(できること)・解決したい問題(提供したい価値)」を前提条件としてテーマに盛り込むのが良いと考えます。
アイデアを書き出して、チーム全員に見せよう
他人のアイデアから連想して思いつく、または自己意見を加えることで、新たなアイデアが生まれることもあります。
書き出し方の一例としては、
- アイデアの発案者名を入れる
- アイデアの内容をシンプルにまとめた見出しを作る
- そのアイデアを出した背景(理由)を記載する。
この3つが重要かなと私は思います。
また、ブレーンストーミングをやって終了、という訳では無いですよね。その後、アイデアをまとめて選定していきますが、「アイデアのメモを見て意味が分からない」「同じアイデア名だけど、言ってたことは違った気がする」「どういう意味か聞こうにも、誰のアイデアか分からない」ということがよくあります。自分の経験でも割とあって、その時間が無価値になったことがあります。
きちんと発想後の計画まで立ててから、アイデア発想を行うのがお勧めです。
ファシリテーターを決めよう
全員がブレーンストーミングしてもアイデアはまとめづらいです。ファシリテーター(進行役)を立てて、場をコントロールすることがポイントだと思います。
ファシリテーターの役割で大事なことは、タイムキーパーよりも、アイデアをまとめるよりも、雰囲気づくりです。
目的はアイデアを沢山出すことです。そのためにアイデアを出しやすい場を提供する必要があります。その場を作るためには、
- 批判・評価をしていないかを監視
- 最初のアイスブレイクとして自己紹介を促していく、などの打ち解けるための進行
- アイデアを持っていても内気で出せない人もいるので、意見を待つのではなく促す
などを行うことが大事です。アイデアの書き出し記録やタイムキーパーは、他の人に役割を振っちゃいましょう。
マインドマップ
ブレインストーミングよりも、連想することに特化したのがマインドマップです。
テーマを決めてアイデアを出し、出たアイデアから連想してアイデアを出し、もしくは別のアイデアを連想、と木枝のように枝分かれしながら発想していきます。
出たアイデアがどのようにして発想されたか、流れが絵で確認できるので、全体像が一目で分かります。
また、連想が深くなるとアイデアがより具体的になる傾向があります。抽象的なアイデアが混ざりやすいブレーンストーミングと比べて、アイデアの形をはっきりとしたいときに役立ちます。

どのような場面が、使い時?
- テーマや目的が決まっていて、それに向かってアイデアを発想したい
- アイデアを深堀し、具体的なアイデアを発想したい
- 0からアイデアを考えるのが苦手、行き詰って発想が難しい時
個人的には、一人でアイデアを練りたいときによく使っています。
アイデアと考えた道筋もまとめれるので、振り返りやすくて便利です。また、直観的ではなく、論理的に考えるので、どうやって思いついたか他者に説明しやすいです。そのため集団でのアイデア出しでも有効です。
論理的であるので他者と発想を共有しやすく、その分発想のスピードも速いです。仕事でも、大きな模造紙に皆で書きながら発想することに、このフレームワークを利用しています。
どうやって使う?
私のやり方で紹介します。
- 大きな模造紙を用意して、それに書いていきます。
個人的に模造紙は無地が好きです。罫線があるとそれに従って書こうとします。文字も小さくなりがちです。自由な書き方が自由な発想に繋がるんじゃないかなーと思ってます。
- 模造紙は壁やホワイトボードに貼って書くのではなく、机や床に貼ってどの方向からでも書けるようにします。
全員が同時に書き出せることで、自分も書きやすいです。また、書くために移動しなくて良いので、アイデア発想だけに集中でき、効率的です。
- 検討テーマを紙の中心に記載します。
このテーマから枝分かれするので、大きく書きます。
- 短いキーワードでアイデアを書き出します。
背景や詳細は必要ありません。思い浮かぶアイデアをキーワードで表します。
例えば、「学生向けの栄養満点食」ではなく「学生向け」と「栄養満点食」に分けます。これで、「学生向け」から「栄養満点食」以外にも派生することができます。ですが、煮詰まってきた階層の深い部分では、ある程度長いキーワードを書く場合もあります。あまり深く考えずに臨機応変にどんどん書き出します。
- 複数色を使い、カラフルに楽しく書く!
複数色を使い、人ごとに色を分けることで、見返したときに誰がどのアイデアを発想したのかが分かりやすくなります。個人で発想するときも枝分かれの区別がつきやすくなります。ぱっと見で全体像が分かるというマインドマップの長所を活かすためにも、カラフルにするのは有効です。
ワールドカフェ
個人で発想するのではなく、大人数が集まってアイデア発想を行います。
- 4~6人ごとのテーブルに別れて、テーマに対して話し合います。テーブルごとにテーマが異なっていてもOKです。
- 話し終えたら1人を除いて、メンバーは別のテーブルに席替えを行います。
- テーブルに残った1人は、前回の議論内容を新しいメンバーに軽く共有します。
- 全員で議論を始めます。
- これを繰り返します
- 最後に、初めのテーブルに戻り、周った各テーブルでの意見や、残ったテーブルで出た意見を初期メンバーで共有し、まとめます。
各テーブルの発想を共有することで、繰り返すごとに新たな発想が生まれます。これにより、4~6人で別れつつも全員で話し合ったことと同じ効果が得られます。

どのような場面が、使い時?
- チームを巻き込んで大人数でアイデア発想を行いたい
- 部門が異なる人や上下関係を超えて、オープンな環境で話し合いたい
- アイデア発想だけでなく、情報の共有や感想を話し合いたい
大人数を巻き込んでアイデア発想を行う場合は、大体この形式で行っています。
全員1つのテーブルで話し合うと収拾がつかなくなるので、メンバーを分ける。しかし、分けると全員を集めた意味がなくなってしまう・・・。そんなときにこの手法が便利です。
また、「自分もこのプロジェクトに関わっているんだ」と実感させることができますので、一体感が出ます。そのため、部門を超えたメンバー全員に納得感を出したい時も有効です。
どうやって使う?
気軽に話し合えるカフェのような空間を作ります。
良いアイデアがでるときは、真面目な会議の場ではなく、居酒屋で話しているときや休憩所でリラックスしながら話している時が多いと言われます。そのようなカフェ的な場を作り出すのも、このワールドカフェの趣旨です。お菓子やコーヒーなどを用意して休憩中を演出します。
全員が話し合える仕組みを作ろう
席替えを行って、情報を共有することで刺激を促すのがポイントなので、個人個人が主役になります。
そのため特定の人が話をまとめたり議論してしまうと、後々刺激が少なくなります。
よく行う手法としては、ボールや札などを用意して、それを持っている人が話すという仕組みにします。話し終わったら意見を他者に求め、そのボールを転がして渡します。こうすることで特定の人が話し続けることが無くなり、発言権がボールという形で分かることで、持った人は話して良いという雰囲気が作り出せます。
オズボーンのチェックリスト
アイデアに行き詰った際に使う視点変換のフレームワークです。
考え方の切り口を最初からリスト化しておき、それを元にアイデアを強制的に広げます。そのリストのテンプレとして、オズボーンのチェックリストが有名です。切り口観点は9つです。
- 代用(代わりに使えるものはないか)
- 結合(何か別のものと組み合わせられないか)
- 応用(他の物に適用できないか)
- 修正(見た目、使い方を変えられないか)
- 拡大(対象を広げられないか)
- 転用(別の分野など新しい使い道はないか)
- 縮小(機能を削除・縮小できないか)
- 編集(別の物に入れ替えれないか)
- 逆転(順番を逆にできないか)
どのような場面が、使い時?
- アイデア発想に行き詰ったとき
- 時間をかけずに効率よく発想を行いたい
- よく浮かぶような王道なアイデアを網羅しておきたい
アイデアを考えるのが苦手な人にとって、切り口が決まっているのは有効です。
また、この9つの観点は先人がブラッシュアップを行って絞った観点です。とりあえずのテンプレートとして良く使います。
どうやって使う?
テンプレだけでなく、独自にチェックリストを作ります。
9つの観点をベースにしますが、考えるテーマによって切り口は変わります。切り口を減らしたり、追加したりして、自分のテーマに沿ったチェックリストに変更します。個人的には、テンプレの9観点は残しておいて、オリジナルの観点を追加するやり方が良いと思います。
なぜなぜ分析
アイデアテーマの元となる課題や原因を整理するフレームワークです。
使い方は簡単で、課題に対して何故?を繰り返していくだけです。
何故、この分析を行うのか?
例えば、「システムの障害が発生した」というテーマ課題があったとして、それは原因ではありません。起こった事件です。なので「システム障害を発生させないためにはどうするか?」というアイデア発想を行っても見当はずれなアイデアが生まれます。テーマが間違っていてはアイデア発想を行っても意味がありません。そのためにテーマをしっかりと分析します。
どのような場面が、使い時?
- 課題の本当の原因を掴みたいとき
- テーマの整理を行うとき
- 何かを改良したい時のきっかけを探るとき
これは仕事上でもよく使い、何か問題が発生した際には関係者を集めて必ず実施します。とりあえずの対処や、今後繰り返さないための対応策にしても、問題の原因を知る必要があります。その際に、このフレームワークは有効です。トヨタ自動車でこの方法を推奨しており、5回は何故を繰り返すことを行っていたそうです。現在は自動車分野だけでなく様々な分野で利用されているので、回数にこだわる必要はなく、真因にたどり着いたかどうかを重視します。
どうやって使う?
原因に至るために何故を積み重ねていきましょう。
例えば、「システムの障害が発生した」というテーマ課題に対して
- 「システムの障害が発生した」→何故?
- 「システムの操作が間違っていた」→何故?
- 「担当者が操作を勘違いしていた」→何故?
- 「操作手順書が見にくいから」→何故?
- 「手順書を作る時にレビューをしていなかった」→何故?
- 「プロジェクトリーダーの作業が多すぎて、レビューをする余裕がなかった」
といったようにです。
すると、「システム障害を発生させないためにはどうするか?」というテーマではなく、「プロジェクトリーダーが本来するべき仕事は何か?」や「プロジェクトリーダーにどうやって余裕を作るか?」になります。何故を重ねるごとに、より具体的になり、本質をとらえたテーマになります。
何故?で出てくる事象は具体的に表現します。
抽象的な表現では正確な分析ができなくなります。「指示が悪かった」という曖昧な表現ではなく、「製造作業に対する指示が漏れていた」と具体的にしましょう。また、「プロジェクトリーダーが製造作業に対する指示を漏らしていた」といったように「誰が・何が」も明確にします。
終わりに
会社、組織、チームで、もちろんやり方が異なります。あくまで、テンプレ。細かいところにこだわらず、参考として使ってください。そして、自分の仕事に合わせたテンプレートを作っていくのが良いと思います。
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